2011年、年が明けて久しぶりに主治医のいる病院へ診察に行った。
私はトリプルネガティブという乳がんのタイプだったため乳がんの多くの人がしているホルモン治療は合わず、手術、抗がん剤、放射線治療で全ての治療が終わった。
「この後は経過観察になるので、定期的に検診に来てください。定期健診は10年かな。」と先生に言われ、どこか寂しい気持ちになった。
がんの疑いで病院へ行ったのが2010年の3月。約10か月毎週通っていた。
次は4月。その後は半年ごとの定期健診になるとのことだった。
これで治療は終わり。
今後は自分で自分の体に関心を持ち、異変を感じたら病院へ行く。
がんの不安をずっと持ちながら、生活していかなければならない・・・そんな気持ちになった。
告知されてから、先のことは考えなくなっていた。
とにかく、今。
今、目の前にあることを一つずつしていく。
先のこと、1年後、いや半年後、いや1か月後、いや明日すらわからない。
ただただ今を精一杯生きる。
それしか考えられなくなっていた。
仕事を辞めてからは、全てのことに自信を無くしていた。
何をしてもうまくいかない。体調不良で約束した日に仕事ができない。
ボーっとしてしまう・・・など
でも・・・そんな状況の時に・・・救いの神が下りてきた・・・
以前、働いていた旅行会社の上司がバイトをしないかと声をかけてくれた。
月に数日のバイト。
体の負担も少なく、家計的にも助かった。
何より・・・慣れている仕事は体が反応してくれ、自信を取り戻せるきっかけになった。
声をかけてくれた上司や一緒に働く仲間もあたたかく私を受け入れてくれ、サポートしてくれ、
本当に、本当に感謝してもしきれないくらいだった。
1か月たち、2か月たち・・・だんだん笑顔も取り戻せるようになってきた。
仕事も楽しくさせていただけた。
ただ会社の組織体制が変わったため、残念ながらバイトは終了になってしまった。
治療が終わり2年くらい過ぎたころから少しずつ気持ちに変化が出てきた。
「過去は変えられないけれど、未来は変えていける。自分の気持ち次第で」
年月が過ぎていくとともに、少しずつがんの事を気にしない時間が長くなってきたのだと思えた。
そして、仕事も少しずつ増やしていきけるようになった。
その後、ご縁で繋がった方からパソコンの講師の仕事を紹介していただいた。
覚えることは多かったが、パソコンは好きだったし、本当に楽しかった。
講師の先生方もあたたかくご指導してくださった。
現在はサービス業のフルタイムの仕事をしながら、パソコンのバイトもしていきたいと思っている。
~~~私の活動/原動力は~~~
主治医の先生に言われた
「あなたががんになったのは、きっと理由がある。その大変な状況を世の中の人に知ってもらうように、わかってもらえるように話してみたら」
がんになると、がんという病気との闘いと気持ちとの闘いがあると思った。
私の場合は、治療は大変だったけれど周りの人たちの支えによって乗り越えることができた。
家族、友人、仲間・・・
多くの人たちが、私のことを支えてくれた。
そして、その支えや協力があったからこそ、私自身もがんに負けないようにがんばろう!という気持ちになっていった。
治療が終わり気持ちが落ち着いてくると、周りの人たちにもがんの事を正しく知ってもらいたいと思うようになっていった。
特にこども達の保護者は乳がんに気をつけなければいけない年代であるということ、自分の体にも関心を持ってほしいこと、そしてこども達も悩むことがあるということ。だから大人もこどもも親子でがんの事を一緒に考えてほしいと思った。
また、仕事についても治療中は、治療による副作用からできることできないことを職場の人たちに理解してもらい、負担の少ない部署への移動や、体調が悪い時にはしっかり休むことなど対策することで仕事を辞めなくてもいいようにできればと思った。
そんな想いをこども達の通っていた学校の校長先生に伝えたところ、「清水さんが地域の人として話すならいいよ」とおっしゃっていただいた。そして2013年2月から、がん体験談からこども達にがんについて考えてもらう「がん教育出前授業」の活動が始まった。
この活動は、がんになると本人も周りの人たちも悩んだり困ったり、不安になったりすることから、がんという病気を正しく知り、がんとの向き合い方、支え合い、生活、予防についてなど考えてもらいたいという内容で授業を行っている。
特に乳がんは40代で罹患者も多く、こども達の保護者の年代でもあることから、こども達やその保護者にも、もしも身近な人ががんになったら何ができるのかを考えてもらえたらと思う。
またこども達には、未来の自分のために今からできること=予防のことも考えてもらいたいと思う。将来のがんのリスクを減らせるように今の生活習慣を見直しできることから少しずつでもチャレンジしてもらえたらと思う。
また大人向けには団体や企業等でがんに対する正しい理解、がんと生活、がんとの共生、がんと仕事などを考えてもらうきっかけになればと思う。
2023年までの出前授業や出前講座は約120件。(予定を含む)
私の体験は一例だが、体験談からがんという病気を身近に感じ、みんなに考えてもらえるきっかけになったら幸いだと思う。
みんなそれぞれ、環境、生活、考え方も違う。
その中で一つでも自分にできることを考えもらえたら・・・考えたことを行動に移してもらえたら・・・という想いが伝わるように、これからも活動を続けていきたいと思う。
長い体験談を最後までお読みいただきありがとうございました。