「なぜ、がん教育をしているのか?」
様々な想いがあります。
答えは一つじゃない。
私の場合は、
・こどもたちにもしも身近な人ががんになったらできることを考えて欲しい。また、未来の自分のために、今からできるがん予防を考えて、できることから始めて欲しい。
・こどもたちの母親世代は乳がんリスクが高いことを知って、気をつけて欲しい。
・もしもの時、正しい情報の調べ方を知って欲しい。
・こどもたちも大人も学校の先生方も、世の中の人たちに、がんという病気を知ってもらい、がんという病気に対する偏見の無い世の中にしていきたい。
などなど・・・
そしてこの9年間の行ってきた授業は、1回1回を心を込めて、その都度先生方との打合せの中で、学校の要望を取り入れながら、こどもたちと一緒に考える授業を目指してやってきました。
私か乳がんになった12年前、こどもたちは幼稚園、小学5年、中学2年でした。
当時、学校の先生方に乳がんになったこと話したら、先生も困った様子でした。
抗がん剤治療の副作用で脱毛し、ウィッグになり、見た目も変わってしまったため、周りの保護者にも乳がんになったことを話しましたが、保護者の方々も私にどのように接していいのか困ってしまった様子でした。
また家族、特にこどもたちも不安な様子でした。
主治医の先生に治療の診察時にこの状況の話をした時、「あなたの困っていることを、世の中の人たちにわかってもらえるように話をしてみたら」と、言われたことが、話すことを考えた第1歩でした。
治療が終わって一段落した約10年前、がん教育が始まることを知りました。
ただ、その頃は患者がするがん教育の基準などがありませんでした。
当時、所属していた団体でもがん教育の活動を取り入れようとしました。
私も校長会や、こどもたちの通う学校先生方にがん教育をさせてほしいと要望しましたが、受け入れてもらえるところはありませんでした。その後、想いの違いからこの団体からは離れ、がん教育の活動を「サンスマイルえがお」として個人で始めました。
学校に何回かがん出前授業をさせて欲しいという話をしていく中で、ある時、小学校の校長先生が「清水さんが地域の人として話すならいいよ」と言ってくださいました。きっとなかなかOKをしてもらえなかった理由は「がん患者がこどもたちに変な話をしてもらったら困る」という学校側の思いがあったのでしょう。PTAの役員や読み聞かせボランティアなどをして行く中で、校長先生が私のことを信頼してくださったのだと思います。
それが第1回です。
その翌年、中学校でも実現しました。
こちらも何度も何度もいろいろな先生に話を聞いていただき、校長先生からやっとOKが出ました。
そして、授業の構成や組立は、友人の小学校の養護の先生が相談に乗ってくれました。
また中学校では、当時の教頭先生が内容やタイトルを一緒に考えてくれました。
その後も開催校の先生方と学校の要望など伺いながら行ってきました。
私の授業の構成は3部構成で、体験談、山梨県のがんの状況、予防です。
資料は当時、県の健康増進課が作成していたがん教育学習リーフレットから、がんの状況、そして予防は○クイズとして、許可をいただき使用させていただきました。(現在のリーフレットの作成は、県教委が作成しています)
そして私の体験談で伝えたい想いを中心にし、お話しさせていただいています。
体験談だけでなく、状況と予防のセットで話すメリットは、体験談だけだと不安になる児童生徒がいるからです。
身近な人ががんになっている場合は、私の体験談から、自分にできる支え方やこどもたち自身が辛い時は我慢しなくていいということを考えてくれる子が多いです。
一方で、がんになった人が身近にいない場合、体験談だけだと怖いという印象があるようです。
私の場合はという言い方をしたり、私はこうだったけれど、違う場合もあるという言い方もしています。
その時に、一緒に予防の話をすることで、安心できたという子も多いです。
もちろん、がんの状況や予防に関する私の話す内容は、教科書の内容に沿ったもの、そして県が作成した資料からですので、それ以上の医療に踏み込むような深い話はしていません。
患者の立場として話せる一般的な内容です。
こどもたちからの質問で、答えられないことは宿題にさせていただき、医療者に連絡をさせていただきお答えしたこともありました。(国立がん研究センターのホームページ「がん情報サービス」で調べることも薦めています)
連絡をさせていただいたのは、ピアサポートを担当してくださった先生や、防煙教育の講師養成・動機付け面接方をご指導くださった先生などです。
ただそのことを看護師の方に話したら「先生方はとてもお忙しいので、そんなことを依頼するのは失礼だから」と言われたこともありました。当時の先生方は心よくお答えくださったのですが(メールでのやり取りで)、その頃からお忙しい医療者の方へお願いができなくなってしまいました。
もちろん、医療者と一緒にすることは私の理想ではありましたが、今まではそういう機会がありませんでした。
それで、授業そのものは一人でやってきました。
こどもたちの前で話すということは、いろいろな配慮も必要です。
親など身近な人ががんを罹患や、亡くなっているケース、また様々な家庭環境などのこども達に対し、ことばを選びながら気を配りながら行っています。
時間内に話すことも大切だと思います。活発に答えてくれる児童生徒が多い場合は、時間調整が難しいこともあります。
私は教員にはなりませんでしたが、教職の免許は学生時代に取りました。
初めて教育実習に行った時、こどもたちに授業をするためには、様々な準備が必要なことや正しいことを教えることの大切さを学びました。
一方で、こどもたちに授業をした時の感動は今でも忘れられずにいます。
またパソコン講座の講師をしていた時、「障がい者の方のパソコン講座」を担当したことがありました。
わずか数ヶ月の講座でしたが、4人の先生と一緒にチームで担当させていただきました。
受講生の障がい者の方々の思いは、私自身の価値観で判断してはいけないこと、相手の希望を確認すること、など様々な学びがありました。
そして講師の先生方の連携が本当に良く、講師として新人だった私は、チームで働くことの意味や、日々ご指導いただきながら成長できました。
そんなこともあり、がんも障がいのある人も、病気に対する偏見の無い世の中にとしたいという想いが強くなりました。
がんや障がいのある人、また生活環境など、自分ではどうすることもできない人生を受け入れて、頑張っている人たち、
そういう人々が、笑顔あるれる世の中になることを願っていると、がん教育を通して中学校では伝えています。
学校の先生方に、私自身のことをどうすれば信頼してもらえるのか。常に私の悩みです。話術が足りないのだと思います。
一方で、出前授業を行った学校から毎年依頼をしてもらったり、他の学校を紹介してもらったりすることに感謝しています。こどもたちのためにという誠意はこれからも持ち続けていきます。
私のやり方が完璧だとは思っていません。ただ、今、できることの中で、最大限やれることをやってきたつもりです。
これからがん教育が広がっていく中で、いろいろな方と連携していきたいです。
医療者、教育者、体験者とより良い連携をしながら、こどもたちにがんという病気から、自分にできることを考え行動してもらえるような授業を行なっていきたいと思います。
私もこどもたちから、たくさんのパワーをいただいています、
それが励みになり、新たな気づきになり、そして次の授業のために少しずつでも進歩していければと思います。
現在、県外の医療者、教育者、体験者の方々との勉強の機会をいただいています。
様々な立場を理解し、より良い授業を模索しながら、こどもたちのためのがん教育を考える機会に本当に感謝しています。
今年度も7月から私のがん教育出前授業を行います。
より良い授業を目指していきたいと思います。
そして、こどもたちのために一緒にがん教育をしてくれる仲間も募集しています。
がん体験者の話は、人それぞれ体験も違うし、伝えたい想いも違います。それがいいのだと思います。
みんなで学べあえたらと思います。
今年度の授業を始める前に、新たな決意を書かせていただきました。
長文を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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